内通者

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 ミリウスの言ったことは、知らない方がよかったかもしれない。一瞬だけそう思ったが、知っていて損はない情報だろうと思い直す。自分の元家族が帝国の内通者など、考えたくもないが。あの二人が、そこまで落ちていたとも思いたくもない。それでも、もしもそれが真実ならば――自分が、出来ることは。 「……お父様とお義母様を、止めること、よね」  きっと、それが出来ていたら苦労はないのだろうが。そんな自虐的なことを考えながら、セイディは大きく伸びをした後寝台の方に近づいていく。明日からは忙しい。ならば、今日はぐっすりと眠っておくに限るだろう。そう、思ったのだ。  でも、それよりも。 「お母様。お母様って……一体、どんなお方だったの?」  祖父母も亡くなっているし、実母の出自を知る術はほとんど絶たれている。だけど、もしかしたら。自分が生きていれば、いつかは実母の出自にたどり着けるのではないだろうか。そう、思ってしまうのだ。 「私、いつかお母様のことを知りたいの。……だから、私のことを守ってね」  夜空に向かってそう伝えても、実母に伝わっているかどうかは分からない。だけど。そう思いながら、セイディは寝台に上がり毛布にくるまった。最近は肌寒くなってきており、冬が近づいてきているのが分かる。夏も終わり、今は秋。そして冬が終われば、春が来る。……それでも、その時まで。次の春まで。……自分は、ここにいることが出来るだろうか? そんなことを、一瞬だけ考えてしまった。まぁ、今はそんなことを考えても無駄なだけなのだろうが。 (明日からは、もっと頑張るわ)  いろいろと不安は尽きないが、それでも役に立つしかないのだ。だってここには――セイディにとって、大切な人たちがいるのだから。
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