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確かに、ミリウスが一緒にいた方がいろいろと頼もしいだろう。でも、いろいろな意味でそれは憚られる。少なくともセイディはミリウスとそこまで仲良くないし、そもそも勘違いされるのが嫌だった。
「助けてくださり、ありがとうございました。どうせなので、私はあの散らばったガラスの後片付けでもしようかと」
「……こんな時まで、仕事か?」
「仕事脳ですから」
「アシェルかジャックが移ったか」
それはそれで、アシェルやジャックに失礼だろう。心の中でそう思うが、それを指摘することは出来なかった。しようと思えば、出来たのだろう。ただ、それを言う元気がなかったのだ。
「じゃ、俺はアイツらを医務室に運んでくるわ。……後で、一度様子を見に戻ってくるから」
「……そこまで、しなくても」
「いや、俺が好きでしていることだしな。何だったら、ジャックとアシェルも呼ぶか」
「……お疲れでしょうから、遠慮しておきます」
実際、ジャックもアシェルも大層疲れているだろう。そんな、一々呼ぶことなんで出来やしない。このことは明日報告すればそれで済むことなのだろうから。心の中でそんなことを思いながら、セイディは騎士たちを軽々と担いでいくミリウスの背中を見つめていた。……やはり、何処となく規格外だ。
「じゃ、あとでな。……ゆっくり、してろよ」
「分かっています」
「あと、なんかあったら通信機で呼べ。……そこに非常用のが付いているから」
「……それ、初めに教えてくださいませんか?」
「忘れてたわ」
いや、それはかなりの重要な問題なのでは……? そう思って頭を抱えてしまいそうになるが、もう何も言うまい。少なくとも、助かったのだ。ぐちぐちと言うつもりはない。しつこい女になるつもりは、一切ない。
(ジョシュア様、か)
アーネストの次に現れた、刺客。彼は彼で、なんとなく厄介そうだ。心に蔓延る不安を拭うように、セイディはガラスの片づけに移った。ちなみに、久々の掃除に心が躍ったのは内緒である。
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