二日目、始まる(1)

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 確かに、アシェルの言葉は正しい。そう思いながらセイディが苦笑を浮かべていれば、部屋の外から王宮の侍女の「そろそろ、移動できますか?」と問いかけが聞こえてきた。そのため、セイディはアシェルに対し「行ってきますね」と声をかけて頷く。 「あぁ、行ってこい。……俺たちも、仕事に精を出す」 「はい」  そう返事をして、ゆっくりと部屋を出ていこうと歩く。それから部屋の扉を開けようとした時だった。部屋の扉が勝手に開き、セイディの手が空を切る。 「おっ、セイディ。準備できたか?」 「……いきなり、現れないでください」  そんなことを言っても、ミリウスには効果などない。分かってはいるのだが、一応言いたかった。だからこそそう言えば、ミリウスは「悪い悪い」と言ってセイディの手首を掴んでくる。それに驚けば、彼は「行くぞ」と言ってそのまま歩きだそうとする。……その所為で、セイディは半ば引っ張られるような形になってしまった。 「あ、あのっ!」 「何か文句でもあるのか?」  セイディが声をかければ、ミリウスは振り返ってセイディにそう問いかける。その表情はとても綺麗な笑みであり、それを見ると口から出ようとした文句が消えていく。これは勘違いされるやら、もうちょっと人のことを考えてください。そんな言葉が、しぼんでいく。 「……い、いえ」
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