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そもそも、ミリウスに機嫌を損ねられてしまえば一大事だ。それくらいでミリウスが機嫌を損ねるとは思えないが、念には念を。そう思いセイディが口を閉ざせば、ミリウスは「言いたいことは、言えよ」と視線を前に向けながら告げていた。
「俺みたいに自由に生きたほうが、人生って楽しいぞ」
「……アシェル様に聞かれたら、怒られますよ?」
「そうだな。……けどさ、アシェルも自由になったんだぞ、あれでも」
王宮の廊下を歩きながら、何でもない風に会話を交わす。周囲の使用人たちはミリウスとセイディに道を譲るように端による。セイディはそれに恐縮しながら歩いていたが、ミリウスは堂々と歩いている。まぁ、彼の身分からすればこれが当たり前なのだろう。
「……そうなの、ですか?」
「あぁ、特にセイディが来てからな」
が、次に発せられた言葉にセイディは疑問を持つ。セイディが来たからと言って、アシェルが変わったとは思えない。もちろん、セイディは自分が来る前のアシェルを知らない。ただ、他の騎士たちはいつも「副団長ってずーっとあんな感じだから」と言っていたのだ。
「俺とアシェルって、同期で付き合い長いしな。だから、他の奴らよりはアイツのことを分かっているつもりだ」
「仲がよろしいのですね」
「まぁな。アイツ、俺に対して当初はいろいろと思っていたみたいだけれど」
けらけらと笑いながら、ミリウスはそんなことを教えてくれる。確かに、ミリウスとアシェルはタイプが全然違う。生真面目なアシェルと、自由奔放なミリウス。水と油。きっと、普通にいれば関わらなかった二人なのだろう。
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