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「実際、俺は俺よりも強い存在を知らない。正々堂々ぶつかり合えば、絶対に俺が勝ってきた。……だからさ、柄にもなくわくわくしているわけだ」
「……はい?」
「俺よりも強いって、どういう感じかなって。……不謹慎だろうけれどな」
けらけらと笑いながら、ミリウスはそう言う。それに微妙な気持ちを抱きながら外を見つめれば、王宮の外に馬車が止まっていた。今日の移動の馬車は、あれらしい。
「ミリウス様って、好奇心が旺盛ですよね」
「まぁな。子供心を忘れないって言えば、良いんだろうな」
「アシェル様は、そう受け取ってくださいますか?」
「いや、全然。成長していない子供だって言われるな」
目を伏せながらそう言うミリウスの表情は、とても綺麗だ。それこそ、見惚れてしまうくらいには。でも、セイディに見惚れるような暇はない。そのため、セイディも同じように目を伏せ「……私は」と唇を動かす。
「私は、これっぽっちもわくわくしていません。王国の未来がかかっていることとか、リリスさんの気持ちを考えたら、そんな風には考えられません」
リリスの過去を知ったからこそ、彼女のことを思うからこそ、そんな楽観的には考えられない。しかし、一つだけ言えることがある。それは……帝国には絶対に負けないということ。たとえ、皇帝陛下のお気に入りたちが攻めてくるとしても。自分はそう簡単には始末されないし、この力を示し続ける。
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