二日目、始まる(2)

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「……そうか」 「私、リリスさんのこと信頼していました。だから、余計にこう思っちゃうんでしょうね」  あそこまで親しくなったのに、最後が裏切りだなんて悲しすぎる。そう思う気持ちもあるが、リリスと出逢えたことには感謝している。そして、なんだかんだ言っても彼女を救うことが出来たことも。きっとリリスは、婚約者と共に生きていくのだろう。……今度こそ、幸せになれればいいのだが。 「フレディ様も、きっとリリスさんと一緒なのでしょうね」 「さぁな」  ミリウスの言葉は、素っ気なかった。だが、その声音に込められた感情は真逆だ。セイディに同意してくれている。それが分かるこそ、セイディは「……頑張ります」と言って胸の前で手を握る。 「私、頑張ります。この王国を守るために、頑張ります」 「……そうか」  王宮の入口にたどり着いて、セイディは一旦深呼吸をする。そうしていれば、ミリウスが「行くぞ」と言って淡々と馬車の方に歩き出す。だから、セイディも続いた。今日は三つの神殿を回る予定である。一応昨日のこともあるため、警護は強化してあるらしい。  ゆっくりと馬車に乗り込み、セイディは椅子に腰かける。そうすれば、ミリウスもゆっくりと乗り込んでくる。そして、馬車はゆっくりと走り始めた。 「とりあえず、何処の神殿に向かうんだっけな」 「……ここ、ですね」  地図を覗き込むミリウスに対し、セイディはそう返事をする。ジャックはきちんと把握していたのに、ミリウスが把握していないのは彼らの性格の違いが顕著に出ているということなのだろう。そう思うと、なんだか笑いがこみ上げてくる。 (頑張るわよ。お母様も、見ていてね)  指輪を握りしめ、セイディはそう誓う。  『光の収穫祭』の二日目が――始まる。
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