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「だけど、何もここまで望んでいませんでした。……なので、どうか元のジャレッド様に戻ってください」
語りかけたところで、彼が確実に元に戻るという保証があるわけではない。もしかしたら、この行為が無駄に終わるかもしれない。だけど、試したかった。試さないと、何も始まらないから。そういう意味を込めて、セイディがジャレッドを見つめ続けてそう言えば、彼は「……ぼ、くは」とゆっくりと言葉を発した。それは、セイディが疎んできたジャレッドの話し方そのもので。だから、セイディは確信する。……彼を元に戻す方法は、語りかけることなのだと。
しかし、ジャレッドが元に戻ったのはほんの一瞬だけだった。どうやら、まだアーネストの力の方が強いらしい。ジャレッドの魔力はあまり強くない。多分だが、アーネストの魔力に負けてしまっているのだろう。……ならば、セイディが出来ることは。
「ミリウス様、ジャレッド様の剣を、はね飛ばしてください!」
そのため、セイディはミリウスにそうお願いする。そうすれば、ミリウスは「分かった」と言ってジャレッドの一瞬の隙をついてジャレッドの手にあった剣をはね飛ばす。その瞬間、ジャレッドはふらついた。よろよろと後ろに傾く彼に近づいて――セイディは思いきり、光の魔力を彼にぶつける。
「――っつ!」
光の魔力は、主に治癒能力に使われるものだ。こうやって、攻撃をすることは褒められたことではない。が、今はこうすることが最善だと思ったし、彼の動きを止めるにはこれしかないと思った。
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