1-1.副委員長

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1-1.副委員長

「副委員長やるひとー。」 「はい。」 「はい。」  隣の席の男子が、私と同時に手を挙げた。 「あ・・・。」  顔を見合って、固まってしまう。  今年度最初の文化祭委員会。この委員会は2年が中心になって活動することになっている。  1年と3年も各クラスから1名ずつ委員になるけれど、彼らは主に委員会で決まったことを自分のクラスに伝達する係。実際に検討、決定、運営するのは2年のみ。だから委員長、副委員長、書記、会計などなどの役職は、すべて2年が担当する。 「かぶったなー。」  先ほど委員長になったばかりの木更津(きさらず)くんが、笑いながら言う。2年は各クラスから2名ずつ委員が出ていて、たしか木更津くんと、副委員長希望のこの彼は、2組だと思う。 木更津くんは、見た目も性格も運動神経も良く、かなりの有名人。何かとご指名を受けやすいため、今回もすぐに委員長に推薦されて、満場一致の即決まりだった。 「譲ってあげれば?(かじ)。」 木更津くんに言われて、副委員長希望の彼が「ああ。」と頷いて手を下げた。  この人、梶くんっていうんだ。大きいな。座ってても背が高いの分かる。 「悪いよ、梶くん。じゃんけんで決めよう。」 私が言うと、 「ん?いいの?」 と梶くんがこちらを見た。 「うん。」 2人で拳を振り上げる。 「じゃーんけーん」 「あ!まった!」 木更津くんが手元のプリントを見ながら声を上げ、私たち2人がピタリと止まる。
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