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スラムの少年
今日は、お忍びで領地の街へやってきた。
男爵領内では一番発展している街だ
他の皆んなには内緒で来ており、長い時間いることはできないが、お土産を買っていこうと思っている
共に来たのは母と幼い頃から私付きのメイドアリッサと数人の護衛
「アリッサ、ルチアをよろしくね。」と母はそう言ってある場所を指差す
ーーケーキ屋だ
「はい、わかりました。いつ頃終わりになるでしょうか?」
「そうね…今は13の刻だから…15の刻にそこの噴水で。」と決め、護衛とケーキ屋へ向かう
母はお菓子作りが大好きでこうして週に一度ほどケーキ屋巡りをして自分が作る際の参考にしているのだ
母がケーキ屋へ入るのを見送り、
「お嬢様、今日はどちらへ行きましょうか?本屋では新しい花の図鑑が出たそうですよ。」と聞かれる
「う〜ん、あ、クロエにリボンお土産にしたいな!」
「わかりました。では、この前行ったところにしましょうか?可愛い雑貨がいっぱいあるからまた、行きたいとおっしゃってましたよね。」
「うん!」
可愛い雑貨がいっぱい売っており、また行きたいと思っていたのだ。
店内で食べることはできないが、持ち帰りで可愛い焼き菓子もいっぱい売っているのだ
(あれ、こんなところあったけ…?)と思い、足を止める
賑わうお店の隙間にある寂れた道。路地裏が正しいのだろうが、幼く、小さい自分にとっては大きい道だ
「お嬢様…?っ…」手を繋いでいたため、すぐ立ち止まったことがわかったアリッサは道を見て何かを察したようだった
「ねぇ、この道って…」
「お嬢様、ここは決して行ってはいけませんよ。護衛がいても、一人っきりの時など特にですよ。」と言い聞かせるよう注意される
「……わかったわ。」
(アリッサがそんなに言うなんて…にしても、ここって、スラムだよね…?)
前世などでたびたびニュースで流れるスラムを思い浮かべていた
ひと目見ただけでは人がいるようには感じられなかった
「さ、行きましょう。」とアリッサに手を引かれる
「うん………」
***
「可愛いのいっぱいあったね!」
「えぇ。そうですね。お嬢様の髪を結うのが楽しみです。」
「ふふ、ありがとう。アリッサ。あ、そうだ…」ととあることを思いついた
「どうしたんですか?」とアリッサに不思議そうに聞かれる
「ふふっ、それはね…」と言おうとすると耳鳴りのようにキィィンとなる
《た、すけて…死にたく、ない…》と弱々しいがどこからか聞こえてきた
(え、今の何…?)声の持ち主がいないからあたりを見回すが、みんないつも通りに歩いてたりする人ばかりだ
「ね、ねぇ、アリッサ、今声が聞こえなかった?助けてって、」とアリッサに聞いてみると
「…?いえ、聞こえませんでしたけど…」と言われてしまう
「え、嘘、結構大きめの声で、」
また耳鳴りのようにキィィンと音がし、
《誰か…》と聞こえた
「あっちだ!」声の聞こえた方へ駆け出していった
「ちょっ!お嬢様!」と突然駆け出していった私をアリッサが追いかけてくる
声がした方向はーー
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