無敵の人――家庭内モンスターとの四十年戦争

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 僕一人ではもうどうしようもないと行政の力を借りようと考えて、県の出先機関である御殿場健康福祉センター(保健所も兼ねる)に電話したこともあるが、精神保健担当課の担当者に窮状を訴えても、かかりつけの病院があるなら全部そっちに言ってくださいと答えるだけで取り合ってくれず、何もしようとしてくれなかった。すべてマニュアルどおりにやるだけのお役所仕事。僕は彼らに何かを期待することをやめた。  精神病の家族に振り回されるあなたもつらいだろうが、一番つらいのは患者である本人だ。  ――という論理を当初は僕も信奉していたが、いつからかそんな理屈はただのきれいごとにすぎないと切り捨てるようになった。本人は病気で善悪の判断ができないのをいいことにやりたい放題。何かしないように見守るのもこっち、何かしでかして尻ぬぐいするのもこっち。
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