無敵の人――家庭内モンスターとの四十年戦争

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 母は退院後に裾野の持ち家を売り、僕が妻子と暮らす御殿場市内の一軒家の隣の空き家を借りてそこで父と暮らすことになった。  退院後、僕らの家の隣で父と住み始めたが、母の奇行は止まらず、特にじゅうたん爆撃のようにすべての知り合い(特に母の嫌いな相手)に攻撃的な電話をかけまくるので、それ以来親戚づきあいはほとんどなくなった。母から電話をかけてこられた親戚から、なんとかしろと僕に苦情が入ることもあった。なんとかしろって具体的にどうすればいいのか? それは誰も教えてくれなかった。苛立ちばかり募る毎日だった。  そんな中だったが、僕が妻子と住んでいた家を建て替えることになった。ちょうど隣家を僕の両親が借りていたから、新築工事が終わるまで僕ら三人もそこに住まわせてもらおうと考えて、大家と両親の許可を得た。仮住まいにかかる費用がタダだと喜んだが、そんなにうまくいくわけがなかった。  神経質な母は夜中の物音一つにも難癖をつけ、気に入らないことがあれば叫びだし、同居して三日目にはとうとう追い出された。僕らはしばらくビジネスホテル暮らしを強いられ、その後教員住宅の空き家になんとか入居することができた。僕と妻は二度と母とは同居しないと誓い合った。
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