あー、あの日の わいの冒険 2年生 その6「読書の秋、発明の秋」

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 学童保育からの帰り道、迎えに来てくれたじっちゃんと並んで歩いていると、じっちゃんが「葉っぱも色づき染まったな」と呟いた。そして「秋やなー」としみじみ言った。  「え、もう?」    10月なって音楽会の練習が多くなって、なんか最近ちょっと暑くなくなったなーって思ったら、もう秋なんかー。はや!! 暗くなるのも早なったしな。周りを見渡すと、ほんまや、もう通学路の葉っぱが黄色や赤、茶色になっとった。そうか、秋かー。  「あ、あの葉っぱ、真っ赤かに染まっとう」  「葉っぱだけちゃうで。秋は、人間もいろんなもんに染まんねんで」  「え、人間も」  「そや。運動の秋、食欲の秋、勉学の秋って言ってな、いろんな事に皆んな集中して染まるんや」  「ふーん」  そうか、染まるんかーって思って色々観察した。そして分かったんや。秋って、なんでもありやな。  姉ちゃんは「食欲の秋ー」って言って、大好きな「やきいも」や「スイートポテト」ばっかり食ってるし、じっちゃんはスポーツの秋らしくて「夏生、剣道初めてみいへんか」って毎日言ってくるし、母ちゃんは音楽の秋らしく普段聞いたことない音楽聞いとるし(ピアノの曲ジャズって言うらしい)、父ちゃんは睡眠の秋らしい。お昼寝ばっかしとう。そんな父ちゃん見てると、うちこんなんで大丈夫か? って子供ながらに心配になるわ、、、   まあええわ。そんなこんなで、わいも何かの秋が欲しいなーって思ってたんや。わいの秋を探そう。  そんなある日、学校では国語の授業で読書の秋「読書週間」って言って本を読んで読書感想文を書く授業が始まった。みんなで図書室に行って本選ぶんやけど、、、  ……読書の秋かー。別にええけど、みんなと一緒で「読書の秋」っていうの何か嫌やなー。わいだけの秋が欲しい。それに読書あんま好きちゃうし。  って考えながら、ぼーっとしとったら、もう授業が終わりに近ずいとった。みんなもう本選んで借りたり、読んだりしてるのに、やっば! 慌てて本を探す。絵本「ぐりとぐら」のカステラ作るんは好きやけど、さすがにそれで感想文書くんは幼稚いか。うーん、うーん。どうしようって思ってたら、この日の授業は終わってもうた。  ……どうしよう。 ……そや! 本好きの南向さんに相談してみるか。  うちのクラスには南向さんっていうちっちゃい女の子がいて、クラスの学級文庫を管理していた。その本好きは相当なもんで、うちの学級文庫は図書室の分室って言ってもいいぐらい本が充実してたんや。あ、ちなみに南向さんの事をもう少し説明しておくと、知識が半端なくて物知りやけど、運動大嫌いなんや。その辺の事は、2年生その5話「彼女の裏の顔 なんて恐ろし〜」に書いてあるから良かったら見てみてな。  「南向さん、わいにあった本ってなんかない?」  彼女を首をかしげて少し考えたあと、一冊の本を選んで取り出した。  その本は、表紙にちょっと気持ち悪い笑った妖怪のような、お化けのようなもんが書いてあった本やった。
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