第一話「呪われた血」

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第一話「呪われた血」

N(遥か昔から、人は地球と言う星の頂点に君臨していた。種は進化し、魔法と言う物を扱う種が出現。人間の天敵として存在した魔物と呼ばれる種族により、人類に多少の種分化が起きた。それから数千年の時を得て、人間は今の文明を作った。その世界には、多種多様な種族が存在し、交流し、生きている。【ヒト族】【エギロシス族】【レオファルス族】【エリアス族】【ラウォヌム族】【ローオリテ族】【ミラック族】7つの種族は、これより新しい歴史を共に紡いで行く。) モルト「……ぐが〜……ごぉ〜……うぷっ!もう食べれない……」 ルイス「お〜?俺ちゃんの授業で寝てる奴がいるねぇ〜?」 モルト「ぐへぇ!?いってぇ!?」 ルイス「あ〜……俺ちゃんの授業そんなつまらない?死にたくなって来たァ!!お前も殺して俺も死ぬぅ!!つまらない授業してごめんなさい!!!!」 モルト「勘弁して下さいよ!大丈夫!先生の授業面白いから!」 ルイス「ホント?……その言葉信じるよ?嘘ついたら許さないからな?……ヤバいリスカしよ……」 モルト「ちゃんと面白いから!寝不足なだけっす!安心して下さいよ先生!」 ルイス「そっかァ〜……授業中は寝るなよ?」 モルト「危ねぇ……」 ヒギメ「ルイス先生はめんどくせぇからできるだけ寝るなよ。あの人一度授業中にリスカしようとして大変だったんだからな。」 モルト「とんでもねぇメンヘラ教師じゃねぇか……」 N(ここは王立クエークス魔法学園。王国内で数少ない魔法を学べる学園であり、魔法の才能を持つ者達が入学する。様々な種族生徒達が在学し、他国からの留学生も多い。) モルト「腹減った〜!何食う?」 ヒギメ「俺は何食おっかな〜?……パスタで良いや。」 モルト「俺も。」 N(ここは学園内にある学食。大量の生徒達が出入りし、教師陣もここで昼食を取るので厨房は常に賑わっている。) モルト「学食ってすげぇな……色んな有名人がいるぞ。」 ヒギメ「うわっ……あそこで飯食ってるの、ラウォヌム族の王子だぞ。」 モルト「流石ラウォヌム族……デケェ……てか、あの人恋人いるんだよな?」 ヒギメ「あそこの席で飯食ってる女は全員そうだぜ?一夫多妻制って奴だよ。」 モルト「羨ましい……」 ヒギメ「ヒト族に産まれたら、頑張ってもラウォヌム族のイチモツに勝てねぇ。諦めろ。」 モルト「クソがよォ……女はやっぱり子宮でしかものを考えねぇ!」 ヒギメ「んなわけねぇだろ。金だよ金。向こうはラウォヌム族の王族だぞ?本妻でも(めかけ)でも、王族入りしたら勝ち組だろ?」 モルト「まぁたしかに。……奥にいる女もデカっ……」 ヒギメ「カレーナ・ヴラソフ。ヒト族とミラック族のハーフで、あっちも貴族の家庭らしいぜ?」 モルト「すげぇな……俺達喧嘩したら顔面ぐしゃぐしゃになるだろ……」 ヒギメ「遠くない未来有り得そうだな。」 モルト「やめろよ怖ぇな……」 N(談笑してるさなか、1つの足音が彼等の席の方に向かう。煌びやかな装飾品に身を包み、白に近い灰色の髪をなびかせる。) アーサー「そこを退け。」 モルト「あ?」 ヒギメ「げっ!?」 アーサー「ここは常日頃俺が昼餉(ひるげ)を取っている席だ。お前達のような低級家庭の者が座って良い場所では無い。」 モルト「何だテメェ……」 N(賑やかな学食は、一瞬にして静寂が広がる。) ヒギメ「行こうぜ。ウェルシュ・ドラゴン家の跡取りだ。実力も相当なものだ。相手にすんな。」 N(次の刹那。ヒギメの頭に何かが垂らされる。びちゃびちゃと不快な音が鳴る。) アーサー「ウェルシュ・ドラゴン家の時期当主たる俺の眼前で、(こうべ)を垂れずそのまま立ち去ろうとは……不敬である。その惨めな姿で()ぬが良い。」 ヒギメ「……行こうぜ?」 アーサー「低級家庭が。何でお前らのような者がこの学園に入れたんだ?学費が無駄になると言うのに。」 モルト「おい。」 N(ヒギメが立ち去る瞬間、モルトはアーサーの背中に手袋を投げつける。) アーサー「……おい……誰に向かって投げつけている?」 モルト「お前にだよトカゲ貴族。」 アーサー「お前……我がウェルシュ・ドラゴン家を侮辱するのか?) モルト「お前も、ヒギメを馬鹿にしただろ?流石にやり過ぎじゃねぇか?」 ヒギメ「モルト!辞めろ!」 モルト「うるせぇ!ダチ馬鹿にされてムカつかねぇ奴はいねぇだろ。だけど、テメェが辞めろって言うから抑えてやったがよォ……コイツは、俺達の親の事も馬鹿にした!必死こいて、働いて、汗水垂らした金で俺達を通わせてくれてんだよ!決闘しろよ。テメェの頭ァ地面に擦り付けさせてやる!」 アーサー「受けてやろう。この俺を馬鹿にした事……後悔させてやる!」 N(学園後者ないにて。) ルイス「はぁ……病む……」 ヒギメ「ルイス先生ェ!」 ルイス「っ!?びっくりしたァ……」 ヒギメ「モルトが!魔法騎士科に決闘を吹っかけました!」 ルイス「……ブフォ!?……や、病む……」 N(学園内闘技場にて。) ルイス「あー……えーと……普通科コース……モルト・リベリオ……」 モルト「決闘は生成堂々と行う。」 ルイス「魔法騎士科コース……アーサー・ウェルシュ・ドラゴン。」 アーサー「決闘は双方の同意の上に行う。」 モルト「故にこの戦いに他の介入は無く、己の全力を尽くし。」 アーサー「故にこの戦いに家柄は関係無く、己の志をかけて。」 モルト「この戦いは……」 アーサー「誇りをかけた戦いである。」 ルイス「両者……始めッ!」 N(その合図と共に、戦いの火蓋は切られた。始まりと同時に、モルトは一気に下がって距離を取る。) アーサー(英断だな。) モルト(魔法騎士相手に近距離戦は分が悪い。まともに斬りあったら、俺が細切れになっちまう!) N(観戦者席にて。) ルイス「あ〜病む……」 ヒギメ「そればっかですね先生。」 ルイス「決闘の口上(こうじょう)噛むか心配したわ……」 ヒギメ「ビシッと決まってましたよ。」 ルイス「……それにしても、良い友達持ったな?」 ヒギメ「まぁ……ヒヤヒヤさせられますけどね。」 ルイス「大事にしろよ。アーサー・ウェルシュ・ドラゴン。傲慢で唯我独尊。だけど、その性格に見合った実力を持っている奴だ。学園内でもそれなりに有名人だぜ。」 ヒギメ「勝てると思いますか?」 ルイス「自分の生徒が負けるって思ってたら教師やってねぇよ。」 ヒギメ「ルイス先生にしては珍しいセリフですねぇ?」 ルイス「うっせぇ。負けたらリスカしよ……」 ヒギメ「どっちなんですか……」 N(その頃、モルトとアーサーは激戦を演じている。) モルト「ライトニングッ!!!」 N(モルトが距離を取ってから、相手に指先を向ける。紫色の雷が、アーサーの頬を横切った。) アーサー(雷?……固有の属性か?厄介だな。) モルト(外した!?いや、僅かに右にズレてた。どんな反射神経してんだよ!) アーサー(距離を取られるとやりずらいな……身体強化ッ!) N(アーサーの体から、赤いオーラのようなものが溢れる。陽炎のように、彼の周りの空気は歪んでいく。そして、地面を抉るような凄まじいスピードの踏み込みで、モルトの間合いに一気に入った。) モルト(早ッ!?剣が、無い?……いや!違う!) N(一閃。薙る。凄まじい風圧が、会場に響く。) モルト(とっさに屈んで良かった……いや、まだ来る!) アーサー「死ね!」 N(1秒にもみたない時間に、すぐさま振り下ろされる見えない何か。) モルト「雷剣(らいけん)ッ!」 N(魔法を駆使し、雷を剣にして振り下ろされる何かを受け止めた。) モルト(ッ!?重ってぇ!!斧ぶん回してんのかコイツ!?) N(そして2人は鍔迫り合う。) モルト「テメェ、その獲物は何だ?」 アーサー「剣かもしれんし、槍かもしれんし、斧かもしれんぞ?」 モルト「教える気がねぇんだな!……でも、一つだけ分かったぜ?お前、才能無いだろ?」 アーサー「……なんだと?」 モルト「俺も、親父に剣術叩き込まれてたから分かる。お前、相当努力して来たんだな?お前の太刀筋、見とれるくらいに綺麗だ。それに、今どき貴族でも常に手袋を着けてるのは珍しい。俺だって、決闘用に1枚持ってるくらいだ。……その手、ボロボロ何だろ?毎日毎日、何千、何万と振ってるから、手の平は豆だらけってわけだ。……お前結局、俺と同じ凡人なんだよ!」 アーサー「その口を塞げ。知ったような口を聞くな。……お前みたいな愚民に、本気を出すほど!俺の才能は落ちぶれちゃいない!!」 N(アーサーはモルトを押し返し、再び間合いを詰める。) アーサー「両断してやる!その不敬!お前の血で償うと良い!」 N(体制を崩し、間合いを詰められたモルトは危機的状況に陥った。) モルト「この時を待ってたぜ……」 N(ビリッ!紫電(しでん)が光る。雷光は、周り……龍の背中を穿つ。) アーサー「ッ!?ぐぁァァァァァ!?」 ルイス「……勝者!モルト・リベリオ!」 ヒギメ「やったなぁモルト!お前!マジで勝っちまうのかよ!?」 モルト「危ねぇ……マジでギリギリだったぜ。」 ヒギメ「流石だよ!……お前、俺のために頑張ってくれたんだろ?ありがとうな!」 N(治療室にて。) アーサー「……ッ!?……熱ッ!?……背中……そうか……負けたのか……」 モルト「入るぜ?」 アーサー「……何の用だ?敗者を馬鹿にしに来たのか?」 モルト「違ぇよ。……決闘の約束。コイツに謝ってもらう約束。」 ヒギメ「うぃっす!」 アーサー「今回の俺の言動、お前達に対しての無礼……すまなかった。」 モルト「だってよ。」 ヒギメ「俺は別に気にしてねぇし、まぁこれで決闘の終着ができたなら何も文句はねぇ。」 モルト「てなわけだ。さいなら先輩。」 アーサー「待て!」 モルト「何だよ?まだ文句あんのか?」 アーサー「いや違う。……俺は、お前に対して何一つ劣る部分は無かった。それなのに、何故負けた?」 モルト「……先輩、俺の事舐めてただろ?」 アーサー「あぁ。」 モルト「あぁ゛!?……いや、まぁ……単純にアンタが慢心して、俺の挑発に乗ってくれたおかけだよ。俺が初弾で放ったライトニング、アンタはいとも簡単に交わした。距離を取ったなら魔法で応戦すれば良いのに、わざわざ詰めて斬りかかった。その時から、俺の切り札(フィニッシュムーブ)は既に発動してた。その後アンタは身体強化の魔法以外使わないで俺とやり合ってた。多分だけど、アンタが普通に魔法を初っ端から使ってりゃ俺は負けてた。ま、言い換えればアンタは全力を出さなかった。いや、俺が全力を出すまでも無いって思ったからか?何にしろ、アンタはその全力を出すまでも無い相手に負けたんだ。」 アーサー「……何も言えんな。間違えていない。」 モルト「でも、先輩がすんげぇ努力した事は知ってるよ。言ったけど、俺も剣術叩き込まれたから、アンタの太刀筋……めちゃくちゃ綺麗だった。あの太刀筋は、そう簡単に真似出来ない。……アンタが積み上げて来たものの集大成だ。」 アーサー「そうか。……失せろ。」 ヒギメ「行こうぜ。」 モルト「おう。」 N(翌日。) ルイス「決闘の勝者である俺ちゃんの生徒!モルト・リベリオに大拍手!!!!」 ヒギメ「うぇーい!」 モルト「……悪い気はしねぇ!」 ルイス「いや〜?まさか俺ちゃんの生徒が勝つとはねぇ……おかげでメンブレ治ったは。」 モルト「まぁまぁ、天才ですから!そう褒めんなよ!ヒギメ、後で学食のパスタ奢ってやんよ。」 ヒギメ「お、ありがてぇ!もっかいやっても勝てるんじゃねぇの?」 モルト「……マジ?……ちょっともっかい行ってくるわ。」 N(闘技場にて。) モルト「……ぶへぇ!?」 アーサー「弱っ……」 ルイス「弱っ……」 ヒギメ「弱っ……」 END
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