399人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
繋がる時も、その子はいきなり入れたりしなかった。
僕の身体を撫で、下肢を触り、身体が快楽に溺れている間に後孔に指を入れて解してくれた。それも少しずつ。まるで壊れ物を扱うかのように優しいその指は中に入ってきても乱暴には動かなかった。僕の様子を見ながら探るように動くその指に、僕は初め何をしているのか分からなかった。けれどその指先が触れた一点に電気のような衝撃を覚えた時、それを探していたことを知った。
その子は僕のそこを解しながら、僕の感じる場所を探していたんだ。
そこからはもう、訳が分からない。
そこばかり責められ、僕は何度もその指でイカされた。そのあまりにも強い快感と何度も極めた疲れで意識が朦朧としていて、その子がいつ入ってきたのかも分からない。気づいたらその子のものが僕の中で何度も出入りし、何度も僕の中で果てた。
なのに全く痛くない。
それどころかすごく気持ちが良くて、身体が何度も歓喜する。
もっとして欲しくて、もっと中に入っていて欲しくて、身体が無意識にその子に縋り付く。
こんなの知らない。
僕はどうなっちゃったの?
初めてのその感覚に混乱しながらも、身体はその幸せな行為がいつまでも続くことを願った。だけどそれが実際どれだけ続いていたのか、僕はいつの間にか眠り、不意に目を覚ました。
知らない部屋の知らないベッド。
身体が重くてだるい。でも痛みは全くなかった。それにベトベトの不快感もない。
いつもなら身体中にまとわりつき、所々カビカビに乾いてしまっている体液が全くなかった。
キレイな身体に清潔なシャツを着ている。
でも下着は付けていない。
あの幸せな時間が夢でなかったのは、後孔の違和感で分かる。だってまだ入ってるみたいなんだもの。なのに痛くないのが不思議。
あんなにしたのに、痛くないなんて・・・。
それにすごく気持ちよくて何度もイってしまった。
これをするようになって、気持ちがいいなんて初めて感じた。
これって、される方も気持ちがいいんだ。
なんだか不思議な感覚にとらわれる。
痛くないどころか、気持ちがいいなんて。
そのいつもと真逆な状態に頭が軽くパニックを起こしていると、ドアが開いた。コンビニの袋を提げたその子が帰ってきたのだ。
「起きてたのか。腹減ってるだろ?」
そう言ってベッドの上に買ってきたものを広げる。そこにはパンやおにぎり、それにお菓子があった。
「食べたらシャワーはあっち。一応拭いたけど身体流したいだろ?」
身体、拭いてくれたんだ。
「・・・ありがとう」
初めてしてもらったその行為に戸惑いながらもお礼を言うと、その子は驚いたように僕を見るとニッと笑った。
「声ガラガラだな。ま、あんなに喘げばそうなるか」
その言葉に、僕は自分の声が酷く掠れてることに気づいた。初めてのことがありすぎて、自分の声にまで気が回っていなかったのだ。そしてその掠れた原因を言われ、僕の顔が熱くなる。
僕・・・あんなにはしたない声・・・。
それに声だけじゃない、あんなこともこんなことも・・・。
昨夜の痴態を思い出して恥ずかしさに布団に潜る。するとその上から、頭をポンポン叩かれる。
「昨日はたくさん楽しませてもらったから、このままここにいていいよ。行くとこないんだろ?しばらくここにいろよ」
そう言うとガサガサと袋を開ける音がする。そっと覗くと、ちょうどその子がパンを齧るところだった。それを見た僕のお腹がぐぅと鳴る。
「ほら、朝食はサービス」
そう言っておにぎりを僕の前に差し出すその子は、朝日の中でキラキラ輝いている。
この子もキラキラの世界の子だ。
だけど、何故だろう。
僕とは違う世界の人には思えなかった。
僕はそのおにぎりを受け取ると、起き上がった。
このままベッドで食べてもいいのだろうか?
お行儀悪くない?
そう思ったけど、その子はそのまま二個目のパンを食べようとしている。だから僕も、おにぎりのフィルムを剥がした。
「・・・おいしい」
コンビニのおにぎりがこんなにおいしいなんて知らなかった。
最初のコメントを投稿しよう!