愛の形

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それは、痛くて苦痛の時間。 痛くて痛くて、だけど強制的に快楽も与えられて、それがまた苦しくて・・・。 だけどそれを堪えることが、愛情表現なのだと思っていた。 だって、本当はそんな事するように出来てないもの。 女の人の身体は初めからそう作られているけど、男の身体はそうじゃない。それを無理やり女の人のようにするのだから、痛くて当然だ。それでもそれを必死に堪えて受け入れることが、相手への愛情の大きさだと思う。 だけどそれだと、受け入れるのが当たり前の女の人の愛情表現はなんだろう・・・? 口淫・・・なのかな? これもすごく苦しい。 口いっぱいに欲望を入れられて、それがまた喉の奥まで突き刺さる。 顎が外れそうなくらい大きく開ける口も、喉の奥を突かれる不快感も涙が出るほど苦しい。それに歯を当てないように舌も使って、大きくそれを育てるのはなかなか難しく、直ぐに大きくなってくれない。それどころか、下手な舌使いに痺れを切らされて頭を掴まれるともう自分ではどうすることも出来ず、ただされるがままに乱暴に頭を揺さぶられてしまう。それを必死に堪えながら噛んでしまわないように一生懸命口を開け、そして喉の奥へと放たれる精を吐き出さないように喉の奥へと流し込むのだ。 それは本当に苦行だった。 その味も舌ざわりも臭いも・・・何もかもがダメだった。 初めて口の中に出された時はその強烈な衝撃に反射的に吐き出してしまい、頬をはたかれた。それからはなんとか飲むようにはしたけれど、その後は胃がムカムカしてえずきそうになる。でもそんなのを見せたらまた機嫌が悪くなるので僕は必死に堪え、次にくる苦しみでその気持ち悪さを忘れるのだ。 気持ち悪さを痛さで紛らわす。 そうしてただひたすら終わるのを待ち、僕はいつも気絶するように眠りにつく。寝室が別の彼はシャワーを浴びた後はここには戻ってこない。だから僕が色々な体液にまみれたまま眠っていても、怒られることはない。だから僕は一人そのまま朝まで眠り、朝シャワーと洗濯をするのだ。 だけど、それで良かった。 女の人では無い僕を抱いてくれるのはそれだけ僕を愛してくれているからで、それを堪えることで僕も彼への愛を示していた。 今日も抱いて(愛して)くれた。 そう思うだけで、どんなに身体がボロボロでも幸せな気分に包まれる事が出来た。 地方の、あまり裕福では無い家庭で生まれ育った僕は都会に憧れていた。 そんな僕は大学進学を機に上京した。 親には学費だけ出してもらい、生活費をバイトで稼いでいた僕は、いつもバイトばかりでとてもキャンパスライフを楽しむような時間はなかったけど、それでも憧れていたサークルに入ってその雰囲気を味わっていた。 ほとんど参加出来ないサークルだけど、たまに参加する飲み会で、僕は彼に出会った。 派手な人だと思った。 服装とかアクセサリーとかじゃなくて、いつも多くの人に囲まれて賑やかな人たちの中心にいた。 田舎者で冴えない僕とは真逆な人。 本当なら話すどころか近づくこともない人なのに、その人は僕の傍に来てその輪に入れてくれた。 何故なのか分からない。 田舎者が珍しかっただけなのかもしれない。 だけど僕はそれが嬉しくて、その人の言われるままにお酒を飲んで、そして酔い潰れた。 気がついた時には酷い状態だった。 そもそも激痛で目が覚めた。 いままで経験したこともないくらいの痛みが身体の中心を襲い、自分になにが起こってるのか分からなかった。 気がつけばベッドにうつ伏せに寝ていて、背中で誰かが動いている。 そしてありえないところの激痛。 その痛さに、戻った意識が遠のいていく。 分かるのは頬に押し付けられた白い枕の感触と、身体を襲う痛みと激しい振動。 そして、荒い息遣いとギシギシと鳴り響くベッドの軋みの音に、内股を濡らす冷たい感触。 訳が分からないまま嵐のような時が過ぎ、すべてが終わってようやく何が起こったのか分かった僕は、それでも何故そんなことになったのかは分からなかった。 だけどそれを問うことも、ましてや怒りをぶつけることも出来なかった。
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