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『今日こそ、君を、僕色に』
冷たい夜風など気にならず。
『うふふ。どうかしら?私は、そんなに簡単じゃないわよ?』
揺れた髪を追いかける。
『いや、やってみせるさ。君の好みは把握済みだからね』
さぁ、今宵、彼女の運命はいかに。
「何色になりましたか?」
「あ、先生」
「俺色」
「はい?」
「い、いえ、何でもないです!赤色に変わりました!」
立ち去る長い髪を、そっと見送る。
「おい、月9ごっこなんかしてんなよ」
実験中だとクラスメイトに、スポイトを奪われた。
(あーぁ)
手持ち無沙汰を解消するため、掴んだ鉛筆をぐるぐると回す。
がやがやと騒がしい教室を、笑顔で眺めている教壇の花を盗み見た。
(あなたも俺色にならないかなぁ……)
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