真っ白な家の中身

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あの頃読んだ本は全て赤く染っていた。 なんでだろうね。 記憶にあるのは赤く染っていて、所々文字が読みにくくなっていた。 なんでだろうね。 あの部屋にある本の表紙たちはみんな綺麗な色なのに、開くと全部赤く染ってた。 あの部屋のものたちは綺麗な白なのに。 私の大好きな本は、最初は真っ赤に染ってたのに、ある日を境に真っ白になった。 文字が読めないとかじゃなくて、真っ白。 文字は読めないし、どんな内容だったのかももう分からない。 この家は赤と白しかない。 そして私はこの家から出たこともないし、外を見た事がないので、物語の主人公たちが言う、空が青いとか、海が広いとか、世界に色があるってのを知りたい。 私は多分、一生ここから出れない。 なんとなくそう思う。 わたし、いつから人と会話してないんだっけ。 最後に会話したのはたぶん、いつだっけ。 カレンダーはあっても多分だいぶ前の日付が書いてある。 そんな気がする。 わたし、ちゃんと言葉喋れるのかな。 おかあさんに会えたら、お外に出てって言わなきゃ。 空の色が知りたいの。 家のお風呂は暖かい赤いお湯だからこの前読んだ本に書いてあった、銭湯?にも入ってみたい。 ここよりも大きいお風呂らしいから、入ってみたい。 こんな真っ白なお洋服よりももっと他の色の服が着てみたい。 したいことは沢山思いつくけど、でも、おかあさんはずっと帰ってこないの。 おかあさんってどんな人だっけ。 なんか、いつも私の前に現れても1mくらい離れてお話するから顔見えたことないの。 絶対におかあさんに触れたらダメなの、おかあさんはすごい人だから近づいたらダメなんだって言われた。 僕は見てしまった。 真っ白な家で有名なあの家。 中は赤と白しかなくて、そこに住んでるのは仲のいい夫婦だけって聞いてたのに。 人影を見たのだ。 夜七時頃か。 仲のいい夫婦が家を出てご飯を食べに行ったのにも関わらず、道路側から見える一室が何故か電気が着いているように見えた。 カーテンがしてあるから本当に電気がついてるかどうかは分からない。 でも、あの部屋だけ明るく見えたんだ。 しかも赤い服を着た少女の姿が見えるんだ。
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