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声に恋して
真っ白なLED照明が灯る部屋。由夢は最近買ったばかりのモコモコのルームウェアに身を包んで、真剣にイヤホンから流れる音に耳を澄ませていた。
「……よし」
最後まで聞き終わると、達成感に満ちた顔でイヤホンを外す。うーんと伸びをすると、突然背後に現れた気配に、ビクリと肩を震わせた。
「今度は何聞いてんだよ」
「ふぁっ……!?」
振り返ると至近距離に星七が立っていて、自分が随分と集中していたことに気付かされる。
「ちょ、チャイム鳴らしてよ……!」
「付き合ってんだから、いいだろ別に」
恋人になっても変わらないやりとりに、呆れながらも笑みをこぼすと、星七がパソコンを覗き込む。
「まだ仕事中?」
「あ、うん。今ね、星七のボイス聴いてたの。ちょうど納品があって」
「はっ?」
以前スタジオで収録したデータが届き、確認作業に当たっていた由夢は、今まさにその作業を完了したところだった。
「スタジオで聴いたときにも思ったけど、やっぱりすごくいいよ! 星七の声にもぴったりで! あ、星七も聴く?」
「いや聴かない。そもそも俺の声に合ってるのは当たり前だろ。俺のこと想って作ったんだろ、それ」
「想ってっていうのは、ちょっと語弊があるような……」
「嘘つけ。前に俺がホテルで言ったこととか、結構使ってたよな」
「っ、それは……」
まったく同じ台詞を使ったわけではないが、星七にはバレていたらしい。素直に認めれば、星七は「ほらな」と得意げな笑みを向けた。
「何はともあれ……! こんなに良い作品になったんだからいいの!」
「はいはい。ちなみにタイトルって決まった?」
今回は収録が当初の予定よりも早かったこともあり、星七にはタイトルなどもすべて仮の状態で伝えていた。
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