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「……本気で言ってる?」
「冗談でこんなこと言わない……。それに私、星七と一緒にいられなくなるのは嫌だから」
今まで当たり前に一緒に過ごしてきたのだ。由夢の人生から星七が消えることなど、考えられなかった。
由夢の返答は意外だったのか、星七は信じられないといった表情だ。そして、探るように由夢を見る。
「なぁそれって……俺と付き合うってことでいい?」
「え?」
「いや、じゃなきゃ無理なんだけど。さっきは普通に接するとか言ったけど、たぶん由夢のこと、ただの幼馴染だとは一生思えないから」
素直に告白をした星七であるが、最後の最後で強がっていたらしい。その事実が何だか可愛くて、由夢の頬が緩む。
「……大丈夫。だって、星七言ったじゃない。私のはじめて全部もらうんでしょ? 仕方ないから私の初彼氏枠、あげてもいいよ」
「なんで上からなんだよ」
冗談っぽく告げれば、やっと星七がクスリと笑みをこぼす。そして、そのまま由夢の腕を引き寄せた。
「――やっぱ、前言撤回」
「え?」
抱きとめられた腕の中、耳元で星七の声が響く。
「はじめてだけじゃなくて全部もらう。今後一切由夢は誰にもやらない」
「なっ……」
まるでプロポーズのような言葉に、由夢は目を丸くするけれど、星七は至って真剣だ。
「……声だけじゃなくて、これからもっと俺のこと好きになってもらうから。覚悟しとけよ」
「ふふ……なんか、また演技してるみたい」
やや乙女ゲームみのある台詞に、こらえきれず笑ってしまう。星七は腕の中から由夢を解放すると、不機嫌そうに由夢の頬を挟みこんだ。
「言っとくけど、俺は最初っから演技なんてしてないからな? 全部本心だから」
「え――んんっ」
反応する間もなく、口を塞ぐように唇が重なる。
控えめに互いの唇を食むようなキスは、やっぱり気持ちが良くて。
――星七とのキス、好きだな。
しばらくの間、互いに離れることなくキスを交わしていた。
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