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種明かし
星七と恋人同士になり半月ほど。由夢は彼女になってはじめて星七の部屋を訪れていた。
相変わらず生活感がなく、スッキリとした部屋の中、由夢は床の上で縮こまっていた。
なぜなら目の前にいるのは星七ではなく、翠と、桃原めろんこと桃花だからだ。
今日は久しぶりに休みが重なった星七と家でゆっくり過ごす予定だったのだが、急遽みんなで宅飲みをすることになったらしく、由夢が部屋に訪れたときには既に盛り上がっていたのだ。キッチンで不満げに酒を用意している星七を見れば、星七にとっても予期せぬ出来事であることは想像ができた。
そして――
「え、知ってたんですか!?」
「私たちの中では“由夢ちゃん”って有名だったから。ね、翠」
「ずっと星七から話聞いてたからね。どんな子なのか会いたくてたまらなかったよ」
「ええ……」
翠も桃花も、元より由夢のことは知っていたと知り、由夢は開いた口が塞がらない。どうやら二人の中では、星七が長年片想いをしている相手として知られていたらしい。
とくに桃花に関しては、今まで仕事上でのやりとりもあっただけに、気まずい感情が込み上げてくる。
――だから収録の時、私に会いたかったとか言ってたのかな。
あの時感じた違和感は勘違いではなかったとやっと腑に落ちた。
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