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――さすがに今日は失敗したくない。なら、一回抜けばいいんじゃないか……?
たとえ先に抜いても、由夢を見れば何度でも起き上がる自信がある。そう思い、星七はおもむろに自身に手をかけた。
これから恋人とするのに、自慰行為をすることよりも、恋人を愉しませることなく果ててしまうことのほうがよっぽど恰好が付かない。
「っ……」
お風呂場にはシャワーが流れる音と、星七の微かな息遣いが響き渡る。熱いお湯を全身に浴びながら、星七は白濁とした欲を一気に吐き出した。
◇
部屋に戻ると、由夢はベッドの上でスマートフォンをいじっていた。
「何見てんだよ」
「わっ!」
覗き込めば見慣れた乙女ゲームアプリの画面。しかもちょうど翠がキャラクターボイスを担当するキャラクターであるルーカスが映っており、星七はあからさまに顔をしかめた。
「またゲームかよ。しかも翠のやつ」
「っ、だって、星七遅いから……」
「あー……まあ、いろいろあんだよ。こっちも」
「いろいろ……?」
さすがの由夢にも「抜いてきた」とは言いづらく、歯切れが悪くなる。
「とにかく。今日はゲーム禁止な」
「あっ」
不思議そうに首を傾げた由夢の手元からスマートフォンを取り上げると、テーブルの上に置く。
あらためて由夢に向き合うと、華奢な体を抱き寄せ、耳元に唇を寄せた。
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