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「いや、プライベートでもやってんじゃん」
「そりゃあ、ルーカス様はかっこいいからね。仕方ないでしょ、もともとファンなんだから」
「はは、開き直ってるし。そんなに魅力的か?」
「星七の百億倍は魅力的! なんたって、声が最高なんだからっ」
完璧なビジュアルは言うまでもなく、俺様に見せかけて、好きな女にはえらい一途で誠実な性格もたまらない。そして何より、ルーカスの落ち着いた低音の声が好きだった。
キャラクターボイスはここ最近人気の声優、伊良皆翠(いらみな みどり)が担当しており、由夢は彼のファンでもある。
残念ながら今プレイしていたのはイベントのルートであり、ボイスはついていないのだが、普段から耳に穴が開くほどルーカスの声を聴いている由夢は、台詞を読んだだけで脳内でボイスが再生される便利な体を手に入れたので問題はない。
完全に開き直って、頼んでもないのにルーカスの魅力を語り出す由夢に、星七は盛大にため息をついた。
「はいはい、わーかったよ。で、いつまで仕事すんの? もう十時だけど」
「え、うそ! もうそんな時間? 退勤しなきゃ」
急いでひととりのデバッグを終え、チェックシートの記入を終えると、慌てて退勤ボタンを押す。深夜残業に入るギリギリのところでパソコンを閉じると、ほっと胸を撫で下ろした。
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