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――人気って、自分で言う? でも、その通りなんだよね。
星七の職業は声優で、本名を文字って『七星(ななほし)セナ』名義で活動をしている。星七は大学生時代にデビュー、二年前に出演したアニメをきっかけに注目を浴び、今では顔の良さも活かしつつ若手声優アイドルとして人気がある。
仲の良い幼馴染が活躍していることは、由夢としても少しばかり鼻が高かった。
「でも由夢がどうしてもって言うなら、友情出演もしてやるから。何かあったら遠慮なく声かけろよ」
「うーん、機会があれば」
「なんだよ、昔は一緒にゲーム作ろうなんて言ってたのに」
「……だって会社の人たちに星七と知り合いってバレるの嫌だし」
「そんな理由かよ。言わなきゃバレないだろ」
七星セナを起用すれば、アプリとしても話題になるだろう。予算さえ許せば、由夢の担当アプリ以外から声がかかるのも時間の問題だった。
しかし、由夢自身は星七と仕事をすることに、気まずさを感じていた。特に乙女ゲームとなれば、こてこてに甘い台詞を星七が吐くことになるのだから。
――幼馴染の胸キュン台詞なんて、聞きたくないじゃない。想像しただけでムズ痒いもの。
由夢にとって胸キュンを提供してくれる乙女ゲームに、リアルな幼馴染の存在をちらつかせたくない。理由はただそれだけだった。
おかげで、由夢は、未だに星七を起用している他社の乙女ゲームをプレイしたことがない。
対する星七は由夢と仕事がしたいのか、度々話を吹っ掛けてくるので、由夢は適当な理由をつけて流していた。
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