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「それにしても女ってわかんないよな。こんなのでドキドキすんの?」
由夢のデバッグしていた社内用端末を奪い取り、星七が何気なくタップする。
ちょうど先ほどのルーカス様のキスシーンが再生されており、由夢は慌ててそれを取り返した。
「配信前のやつだから社外秘です!」
「べつにバラしたりしないわ。というか、こんな台詞言う奴いないって」
「いいの、ゲームなんだから。これが醍醐味なんです~」
乙女ゲームの台詞なんて、クサくてオーバーなくらいがちょうどいい。現実で吐かれたら引くような台詞でも許せてしまうのが二次元の世界であって、ユーザーたちも非日常を味わうためにプレイしているのだから。
「ま、いいけどさ。幼馴染としては心配なわけよ。乙女ゲーばっかして女として腐ってく由夢が」
「く、腐ってないし……!」
「いやいや、この部屋見れば心配になるだろ」
星七が呆れ口調で見回す部屋には、所狭しと様々なゲームやアニメのグッズが置かれてある。
テレビボードの傍にある専用の棚には、好きなキャラクターのアクリルスタンドに、クリアファイルやマグカップなどの限定アイテム。その中心に家宝の如く、以前星七に頼み込んだ伊良皆翠の直筆サインが飾られている。さらにベッドの上にまでキャラクターの抱き枕やぬいぐるみが寝かせられており、正真正銘のオタク部屋だ。
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