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「それに由夢の恰好も。在宅だからって、起きたままはまずいだろ」
一応顔は洗ったけれど、スッピンにぼさぼさ頭をまとめただけのラフなスタイル。スウェットはお風呂に入るとき以外はずっと着用していて、私服かパジャマかもわからない。
「……今日は会議なかったからいいの」
「会議ある時もどうせ上半身整えるだけだろ」
「うっ……」
何でもお見通しの星七に由夢は言葉を詰まらせる。反論しながらもわかっていた。自分が腐りかけた女子であることくらい。賞味期限は切れているけれど、消費期限ではないからまだ大丈夫。由夢はまさにそんな感じだった。
それに比べて星七はどうだろう。収録終わりだったこともあり、綺麗にセットされた髪に、ラフに見せたお洒落ファッションで、良い匂いまで香らせている。どちらが女かもわからないギャップに由夢はガクリと肩を落とした。
「出社のときはちゃんとしてるもん」
「出社のときしか外出ないだろ。あとたまのオタ活?」
「……ねえ、なんでそんな意地悪言うの?」
ああ言えばこう言うやりとりに嫌気が差して、星七をジロリと睨みつける。
「いつまで経ってもリアル彼氏がいない幼馴染の心配。由夢がそんなだと、俺がいつまでも子守りしなきゃいけないだろ」
「頼んでないです〜。私だって、彼氏の一人くらい頑張れば……」
「キスってどんな感じだろう~とか妄想してるうちは無理だな」
「なっ……!?」
先ほどルーカスとのキスを想像しながら漏らした独り言を聞かれていたと知り、由夢は絶句した。
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