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幼馴染以上、家族未満
柔らかな蠟燭の明かりが灯る部屋――
しなやかな指先が、撫でるように私の顎をとらえる。
深く澄んだ碧眼に射貫かれ、体が吸い込まれそうになる感覚を覚えた。
「……キスしてもいいか?」
「っ、そんなこと、わざわざ聞かないでいただきたいわ」
つい強がった言い方をすれば、彼は形の良い唇をゆるりと結び、親指で唇の輪郭をなぞる。
「失礼した。こうも美しいものを目の前にすると、俺も怖気づいてしまうようだ」
「……貴方らしくないのね」
「お前の前だとな。だが、もう我慢はしない。この唇だけじゃない。お前の心も体もすべて俺だけのものだ。決して誰にも渡さない」
艶めいた台詞を残し、端正な顔が近づいてくる。
これから起こる甘やかな時間に胸を高鳴らせながら、ゆっくりと目を閉じた――。
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