2人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
今日は前撮りの日。
どうやら私達は予行練習もしない──いや、できないまま、結婚式を迎えてしまうことになりそうである。
ガチガチに固まっている彼。見ているこっちが不安になってくる。
「ほら、しっかりしてよ。新郎さん!」
バシッと背中を叩いて喝を入れてみるも、彼は狼狽しながら頷くだけだった。
「こちとらあんたのせいで結婚式がファーストキスなんだからね!」と大声で叫びたい。けれどそんなことできるはずもなく、深いため息をつきながら私は撮影場所へ向かった。
そこには誰もが口を揃えて言うだろうイケメンが待機していた。
「ほんと顔“だけ”はイケメンなのに」
「“だけ”はってなんだよ。“だけ”はって」
カメラマンさんが微笑ましそうにカメラのシャッターをきる。その音を聞いて、私達はすぐに事前に予行練習してきたポーズをとり始めた。
シャッター音が聞こえるたび、「ああ、この人とこの先も生きていくんだな」という思いと「ああ……式は大丈夫なんだろうか」という不安が募っていった。
前撮りが終わった帰り、私はスタッフさんにあるお願いをした。
最初のコメントを投稿しよう!