白い点の存在

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「部長がどうして私の仕事を?」 「朝倉さんの黙々と仕事をきっちりこなす所を見て学んで欲しいと部長は言っていました」  私はまたも驚いた。部長が私のことをそんな風に見ていたとは思わなかった。  それから他の人も私を評価していることがわかった。全部、杉山君から聞いたことだけど、社内で私の評判がとても良かった。白い点がどんどん広がり黒い心を染め上げていく。  だけど白い点がどれだけ広がっても黒い輪郭が消えることはなかった。その理由は自分自身、とてもわかっていた。杉山君に私は叶わない恋をしていた。  私は杉山君より一回り以上年上で地味な女。社内には若くて綺麗な女性がたくさんいる。私はただ、杉山君が隣にいて、会話をしてくれればそれで良かった。  杉山君が会社に来てから半年が過ぎた。社内のいろんな人と交流して、自分で新しい企画をできるほどに成長した。  杉山君が若い女性社員と気軽に話していた。声は聞こえなかったけど、その姿を見ると嬉しそうで、私は悲しくなった。私なんて相手にされないと思いながら、もっと話したいという気持ちが消えなかった。  しかし予想しない展開に進んでいった。会社からの帰り道、杉山君に声をかけられた。思い詰めた表情で食事に誘われた。
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