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「鈴音〜私、もう一文字も書けない」
半泣きで鈴音に抱きついているのは私。
顔はよく似ているが、背は鈴音のほうが3センチ高い、私は今25歳、鈴音の3歳年上の姉だ。
いま二人で一緒に暮らしている。相次いで両親が亡くなり、広い家を持て余し、住んでいた一戸建てを売って、福岡市内の2DKの賃貸マンションに住んでいる。
私は小さい頃から物語を作るのが好きだった。小学生のときの将来の夢は小説家だった。
鈴音に毎晩聞かせているのは楽しかった、今もその延長で物語を作っている。プロの作家にはなれない。そんな才能がないことはかなり早い時期に気がついた。いまは仕事の傍ら、せっせと書いている。携帯小説のサイトにあげて、自分の作品を読んでもらえることを楽しみにしている。
そして時々、定期的にスランプだ〜と鈴音に抱きついて、甘えている。鈴音に抱きつくと安心できるからだ。
「どうしたの?」
「書き始めて5000字を超えると…」
「超えると?」
「急に先が浮かばなくなる病に罹ってるの!」
「ふ〜ん」
反応は少し薄いけど、いつも満足するまで抱き着かせてくれるかわいい妹の鈴音。鈴音と話していると気が付いたら頭の中がすっきりして、いつもすっきりとなる。
かわいい妹。
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