面倒な役回り

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 それは紫色の古ぼけた風呂敷に包まれていた。持ってみると結構大きくて重い。一体何だろうか?不思議とそれが気になった俺は、やけに厳重に包んでいた風呂敷を解いていこうとするが、なぜかそれは固くて解けない。ここまできたら気になる、風呂敷なんて後で別のやつに包めばいいだろう。  そう考え居間から鋏をとってきて風呂敷を切っていく。するとその中からは一人の女性が描かれた肖像画がでてきた。綺麗な人だ。その女性は黒い髪をお団子に結び淡いピンク色の着物を着ていて、手を胸の前で握り悲しそうな顔をして描かれていた。 あまりの綺麗さに俺は数分間その肖像画を見つめていた。  ボーンという時計の音が鳴ったことで俺は意識を取り戻す。いけない、掃除と荷物!肖像画を丁寧に置いて俺は掃除機をもって居間などを掃除し始めた。 「もう14時か」  掃除やら荷物詰めが終わるとすでに14時をすぎていた。俺はスマホを取り出して老人ホームへ「今から1時間後に荷物を届けます」と一言電話を入れる。これであとは荷物を届けるだけだな、とじいさんの荷物を車に乗せたあとにふと、あの肖像画を思い出した。 「持って帰ろうかな」  俺はなんでかそう考えた。普段なら無断で何かを借りたり持って帰ったりなんてしないのに、なぜか俺はあの肖像画を持って帰らなくてはならないと思うようになっていた。そして気が付いたらじいさんの荷物の横にのせて出発していたのだ。
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