過去の話

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「だからわしは神社の神主に頼んでもらった風呂敷に包んで奥の方にしまったんだ。それが、なんで。桜さん、桜さん、あなたはまだわしを……、違う、違う違う違う違う違う違う! 裏切ったわけじゃない!! 違うんだ」 「どうされたんですか!?」  いつもは穏やかで落ち着いたじいさんが突然発狂し、俺はどうすればいいかわからず固まっていると異変に気付いた先ほどの介護士のおにいさんが駆け付けてくれた。そしてじいさんを落ち着かせようとするが、なかなか落ち着かない。  周りにいたほかの介護士らしき人たちも何人か集まり、とにかく俺は退席するようにいわれ、じいさんは一旦保健室に連れていかれることになった。俺は介護士の方にじいさんのこと頼み、車へを戻った。  正直あの様子は尋常じゃない、いったいどうしたっていうんだ。そう考えながら車に乗ると、後部座席に置かれた例の肖像画が目に入った。 「普通の肖像画、だよな」  改めて肖像画を見るが、特に何の変哲もない綺麗な肖像画だ。しかしじいさんの話を聞いた後だとどうにも気味が悪いような気がする。しかしまたじいさんの家まで戻ると帰りが遅くなるため今夜一晩は俺の家に持ち帰ることにしよう。  そして明日にでもじいさんの家にいって返しに行けばいいさ。そんな風に考えたことを、俺は一生後悔することになる。
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