面倒な役回り

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面倒な役回り

「なんで俺がこんなことを」  俺だってバイトとか忙しいのによ、なんて若干腹を立てながら青空の下俺はじいさんの家まで借りものの車を走らせていた。今年の夏は暑すぎるだろう、そんなんだから俺がじいさんの家に来て荷物を準備するはめになるんだ。そう心の中でぐちぐちといいながら祖父の家に入る。  じいさんはここ数年前から認知症が進んでいき、話がかみ合わなくなってきた。心配になった母さんたちはじいさんと一緒に住もうとしたが、結局介護の問題から今年の1月にじいさんは老人ホームに入ってもらうことになったのだ。  それから荷物は毎回母さんや叔父さんたちが用意していたんだけど、今年は例年より早く夏がきたため、予定より早めに夏用の布団やパジャマ、私服などを用意してほしいと老人ホームの職員さんに言われた。しかし母さんたちは仕事で準備が難しいため、大学生で時間のある俺が準備を頼まれたのだ。 「まずは家中の窓を開けないとか」  ばあさんは数年前に亡くなりじいさんは老人ホームにいるため、この家には今誰も住んでいない。そのためなるべく誰かしらが1か月に1回来て、窓を開けて軽く掃除をすることで家の老朽化を少しでも防ごうとしている。よって俺は今日荷物の準備とともに軽く掃除もしなければならない。  それにしてもそこまで大きくない家ではあるけれど、正直一人で掃除と荷物準備は骨が折れる。掃除は軽く掃除機だけかけて、あとは荷物を詰めてさっさと帰ろう。そんなことを考えながら家中の窓を開けて空気の入れ替えをする。さて、じゃあまず掃除機を納戸から出すか。  事前に母さんから掃除道具や洋服のある場所は聞いていたため、探す手間はかからない。あった、これか。古い掃除機に手をかけて取り出した瞬間、ガタッと何かにぶつかる音がした。 「なんだ、これ?」
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