エピローグ

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誰だ? こんな小さく狭い空間でいるのは俺一人。 それなのに声が聞こえる。 艶やかな女の声だ。 (声の元へ来るが良い。早くしないと妾の気持ちが変わってしまうぞ) ――偉そうに…… (妾は江戸時代からいる故な。年功序列はこの国の美徳ではないかえ?) 妙に癪に障る言動に腹をたちながらも、声を頼りに近付いた。 しかし声は棚の奥から聞こえてくる。 幽霊か何かなのか…… いやそれよりも声の正体を突き止めたい。 その一心で引き戸を開け続けた。 そして見つけた。 一本の刀……… 事件番号No.234589 確か東洋商事の役員がこの刀で殺されたんだよな。 容疑者は現行犯逮捕され、他にも余罪があったから裁判では死刑になった。 その後も控訴して最高裁まで持ち込んだが、判決は覆らずに死刑に…… ………思い出した。 あの死刑囚は最高裁の判決の時に叫んだんだ。 「女が唆した」と……… (その女が妾じゃ) 「ひゃあ!」 急に刀が喋り出したので変な声が出た。 それでも刀は囁く。
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