Ⅻ 雪に轟く銃声

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 即座に断定したサンドラに、シンが動いて反対側の小窓を開け、そちら側には何もないことを確認すると、サンドラの隣に行った。するとサンドラは場所を明け渡し、いつでも駆け出せるよう、伝令二人の馬を外に出す準備をしながら、ヒルネスとリヴァに目配せる。彼らは自分の荷物をまとめて外套を羽織り、ほかの者たちも、有事に備えて素早く身支度を調えた。 「あれはまさか……」  目を凝らしていたシンが、眉間を寄せて呟いたのを、サンドラは肯定する。 「そう。あれは、銃だ」  天幕内に、衝撃が走った。騒ぐ者はいないが、皆の顔つきが変わる。 「組織の見回りだろう。恐らく彼らは一旦戻る。リヴァとヒルネスは、その隙にビザンティンへ走れ。相手の規模がわからない以上、我々もここから後退、本体と合流する」  潜めた声で放たれた声に、皆が視線で頷いた。  哨戒(しょうかい)中と見られる男たちは、しばらくこちらを見ていたが、近付いてくることはなく、再び強くなり始めた風に追い立てられるように、姿を消した。 「ヒルネス、リヴァ。視界は悪くなってきたが、行けるか」  男たちの姿が完全に見えなくなってから、サンドラが問う。ヒルネスとリヴァは、力強く頷いた。それに「頼んだ」、とそれぞれに拳を合わせると、二人はひらりと騎乗し、昨日の風雪で現れた雪岩の間を、迷うことなく駆けて行く。 「我々も行くぞ。目指すはマラーニャ村だ。天幕は捨て置く。我々が動いていないように見えれば、少しは時間を稼げるかもしれない」  それぞれが低い声で「はっ」と応じ、必要な荷物だけを括り付けると騎乗した。そうして悪くなり始めた視界の中、サンドラを先頭に最大限出せる速度で来た道を戻る。  マラーニャ村までもう少し。危険なのはその手前にある、崖に挟まれた狭隘(きょうあい)な道を通るときだ。
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