Ⅹ 強められる警戒

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 何が隙になるかわからないから、本当にしてしまえるならそれに越したことはない。それに先日、ユリゼラにフューリアのことを話した際、口裏合わせに使ってもらって構わない、テラ様やジェラルド夫人にも協力をお願いしておく、と言ってくれたのだ。だからこそ、とっさについた嘘だった。 「では、お誘いに行って参ります。場所はどちらでご案内しましょうか」 「最奥(さいおう)で、お願いします」 「かしこまりました」  軽く頭を下げると、クロシェは受験者騎士を一人連れ、即座に出て行く。バララトも、「では厨房に伝えて参ります」と、同じく受験者騎士を一人連れて出て行った。  立ち上がったサクラは、ガゼルが残ったことを幸い、まだ報告されない一件を聞く。 「ガゼルさん、昨日ハーシェル王には、お目にかかれましたか」  それに、ガゼルがしまった、という風に口元を抑えた。 「会えました。報告が遅くなって申し訳ありません。フューリアの警戒を優先してしまいました」  そうして、サクラはユリウス亡き後、ハーシェルが二度に渡って使者を立てたこと、そしてサラシェリーアの遺骨を奪われた報告を聞いた。 「サラシェの遺骨……どうしようというんでしょうか……」 「わかりません。異能ではなかった彼女の遺骨、フィルセインにとって使い道があるとも思えず……。取り返そうにも、なんの手がかりもない状態です」  目をつぶり、サクラは動揺を鎮めるべく静かに息を吐いた。 「オフィーリアは……あれからどうなったか、ご存知ですか。エラルさんが今日いないところを見ると、まだ落ち着いてないんでしょうか」 「いえ。あれからカイザルが様子を見に行ったのですが、平静を取り戻していたと報告がありました。夕食もしっかり食べていたようです。ただエラルが、『オフィーリアにはきちんと見せる』と言ったとか。恐らく、整理しながら過去を見せるという意味ではないか、と」
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