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「ただ、ドレイクとは特別、親和性が高いのではないかと、思うの。それが、少し心配で」
「ドレイクとの親和性が……ですか?」
ええ、とユリゼラは頷いた。
「あなたは日頃とても穏やかだし、怒るのがむしろ苦手にも見えるけれど……自分のことより、他人の……近しいと認識している誰かに何かあれば、ものすごく簡単に、その『苦手』を飛び越えてしまうわね。それが、ドレイクを暴走させるようなことに、ならなければいいけれどと……少し、不安になったのよ」
両手で、サクラの右手を包んだまま、ユリゼラが目を伏せる。午後の光に艶を返す睫毛は長く、纏う憂いは彼女の色香を強調するものでしかない。しかしながら、告げている内容は自分にとってまさしく不穏で、サクラは溺れていたい美しさを懸命に横に置き、頭を動かした。
「ドレイクが暴走……って、その……全部焼き尽くしちゃうとか、そういう……?」
「ええ。あなたの印を持つ以上、あなたの制御を振り払うことは出来ないわ。でも、あなた自身が自分を制御出来なければ、ドレイクはサクラの心に感応するまま、力を揮う」
ユリゼラの憂慮するところはなんとなくだがわかって、サクラはユリゼラの手に手を重ねて、そっと握り返した。
「気をつけます」
琥珀の瞳をまっすぐに見て言えば、花が綻ぶような笑みを広げ、憂いを払った華やかな空気を取り戻す。ユリゼラが笑えば、なんだかすべてがうまくいくような……そんな気持ちになるから不思議だ。
「あの……ハーラルさん、最近全然お姿見なくて。その……どう、されてますか?」
前向きな気持ちの今、聞いておこうと、サクラは懸念のひとつを切り出した。
「ハーラル? 元気よ。今日は人と会う約束があるとかで休んでいるのだけれど」
「そう……ですか」
「何か、話したいことがあった? サクラに時間があるのなら、そのときに訪ねるよう伝えるわ」
「いえ。お元気ならいいんです」
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