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暗く細い廊下を抜けると、明るい本廊下。少し走れば、執務室への階段。駆け上がり、直線距離を執務室まで走る。
「ハーシェル王! 助けてください!」
サクラがバン! と扉を叩いて声を上げる。中からすぐに、ラグナルが現れた。
「サクラ様?!」
驚きの声を上げる彼に、ハーシェルも姿を見せ、「入れ」とすぐ執務室に引き入れられる。
「サクラ様ご無事で……!」
ケシュフェルが、ソファの背もたれに腕をつき、乱れた呼吸で崩れるように床に座り込んだ主君に駆け寄った。
「今しがた、ケシュフェルが着いて話を聞いたところだ。フューリアは、追って来てるのか」
「いえ……多分、ここに逃げ込んだのは、気付かれてないはずです」
噎せるような咳をして息を整えたサクラは、ケシュフェルの手を借りて立ち上がる。
「今頃、最奥の扉が破られて、荒らされているはずです。フューリアを、捕縛、出来ませんか」
「もちろんだ」
ハーシェルが言うと、心得たラグナルが軽く頭を下げ、退室した。
「ハーシェル。水、もらうぞ」
「ああ。皆も、好きにしてくれ」
ガゼルは小台に設えてある水差しを取り上げると、伏せられているカップに注ぎ、サクラに差し出す。
「ありがとう、ございます」
呼吸が整ってきたのか、サクラは笑顔を見せてそれを受け取った。飲み干したとき、バラバラと部屋の外に気配を感じ、ノックされた音に全員が警戒したが。
「失礼致します。ハーシェル王。これより厳戒警備に入ります」
入ってきたのは、王立騎士団の面々。ハーシェルが即位する際、最初に忠誠を誓った者たちだ。
「ああ、頼む。それと、セルシアに茶を出したい。ハーラルを呼んでくれ」
「御意」
一人が退室し、部屋の中は静まり返る。王の近衛九名に自分たち、それにハーシェル。十四名にもなった部屋は、広くても息苦しい。それと察した訳でもないだろうが、二人が扉の護衛に部屋を出て行った。
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