Ⅻ 雪に轟く銃声

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「サクラ様の予想が当たり、三名を捕縛致しました!」 「え、ホントに?!」  驚くサクラに、アルカミルは片膝を着いたまま続ける。 「営所に協力を求めたところ、半年ほど前から、怪しい雰囲気と行動をとる者たちとして、警戒している人物が四人いると答えがありました。これまでの行動から当たりをつけて張っていたところ、そのうちの三人が酒場に現れたのです。爆発音は街まで聞こえまして、ドレイク様の炎を見ていずれも血相を変え、戻ろうとして森に入ったところを捕縛致しました。今は団長もバララトも、取り調べについておられます。もう少し情報を聞き出したいから、先にお戻りをと」 「すでに、警戒対象として認識されてたんですね。ここの営所の騎士たちも優秀で、安心しました」  笑って言い、サクラは雪の舞い降りる空を見上げた。 「もう一曲歌ったら帰ります。さっき途中になってしまって、浄化も半端になってしまったので」 「御意」  全員が頷き、歌うサクラの護衛として残る者、帰り支度を整える者、男が死んでいることを街の営所に伝えに行く者と、銘々が動き出す。サクラは無駄のない彼らの動きを頼もしく眺めて、雪に語りかけるように、歌い始めた。  三領から帰ってきて、サクラへの献上品として増えたものがある。それは、歌だ。この世界の音楽家やそれを志す者たちが、サクラの歌う歌に触発されて、曲を献上してくるようになったのだ。それらのほとんどは、平和への祈りが歌詞として綴られたもの。中には、失った家族や仲間を悼むもの、恋人を思慕する曲などもあった。曲調は様々で、けれどいずれの曲も、心に残る一節があった。サクラは時間のあるときにそれらの譜面をピアノでさらい、歌いやすいもの、心に残ったものから覚えた。今歌っているのは、そんな一曲だ。
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