冬華火

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 人は言う。一年というのは長いようで短いねと。そんな事はない、一年は長いのだ。  そこで僕は名案を思いついた。いや、ちょっと考えれば直ぐに分かる事だった。それは、もう一度寝直せば良いだけである。寝直して、初夢を見直す。  僕は早速のように布団に潜り込んだ。  が、生後六ヶ月になる僕の息子は、それを許してはくれなかった。僕と妻の間に挟まれて眠っていた息子は、その綺麗な一重のつぶらな目をパチリと開けると、うーうー、と意味不明な声を発し始めた。 「なんでコイツは目を覚ますと、必ず誰かを呼ぶように唸るんだ?」  多分それは、寂しいとか駄々をこねてるとか、そんなものではないのだろうと思う。まだ自分一人では何も出来ない、それを自覚して助けを求めているのだろうと思う。それは、目覚めの悪い夢を見てしまった今日の僕の不快感と似ているものなのかもしれない。  とりあえず僕は、まだ目覚めきっていない気怠い体をヨイショと起こし、助けを求めている息子を抱き上げた。  と、息子はピタリと唸るのを止め、僕の顔を確認するように目蓋をパチクリさせる。それから、一変してニコニコと笑顔を見せた。  元気そうだ。まるで昨日の熱が嘘のようだ。  そう、僕の息子は正月早々九度の熱を出して大変だったのだ。まさか元旦に初詣に行く前に小児科に行くハメになるとは夢にも思わなかった。もっとも、原因は僕なのだが……  息子はインフルエンザだった。大晦日一週間前にかかった僕のものがうつったようだった。息子に対して未だに父親の自覚が薄い僕でも、さすがにこれにはまいった。もちろん、うつさぬように息子には近付かず、マスクもしていたのだが……
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