遠日の夢

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 明くる朝、僕は編集者と一緒に会場へと向かった。漫画賞授賞式会場へと。  土壇場で僕が選んだ道は漫画家だった。なろうと思えば宇宙飛行士でもパイロットでもなれた。しかし、大好きな絵を描く夢を捨て切る事が出来なかった。父とは散々喧嘩をした挙句、僕は家を飛び出し、六年ぶりに再会した父はガンで危篤状態、口を利く事も出来なかった。  そんな父は、何か言いたそうな目で僕を見た後、静かに目を瞑り、息をひきとった。  この漫画が売れ始めて、直ぐの事だった。 「今回受賞された作品では壮大なスペースオペラが描かれていますが、やはり一番魅力的なのは、何と言っても主人公だと思います。モデルにした人物とかはいるのですか?」  受賞会場での記者のそんな質問に、僕はニコリと微笑み、迷わずこう答えた。 「父です」
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