遠日の夢

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 無事授賞式を終え、帰宅した僕は仕上がったばかりの原稿を再チェックする為に自室ではなく仕事部屋へと向かった。  ドアを開け電気を点けると、仕事机の上には、原稿の横に一通の封筒が置かれていた。  封筒には母の字で、 『お父さんの物を整理していたら出てきました。生前に渡しそびれた物のようです』  そう書かれてあった。  母さん、いつの間に来たのだろうと思いつつ、今更父に怒られるような気もしながら、僕は恐る恐る封筒を開く。だが、その中身は、あの回転寿司のアンケート用紙の裏に描いた、今はすっかり茶ばんでしまった『うちゅうひこうき』の絵と、Gペンと、父の短い手紙が入っていた。 『今度は、これに俺を乗せてくれ』 「母さんから聞いてたのか……漫画、読んでくれてたんだ……」  まいったな。  仕上がったばかりの原稿が濡れちゃった。  描き直しだ……                                   了
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