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妻の声
ここは…どこなんだ? 暗い……何も見えない。俺はどこかに閉じ込められているのか? 待てよ……俺は……俺は……誰だ?
「おはようございます高山さん。点滴代えますね。今日はとてもいい天気ですよ」
高山? 俺の名前か。
点滴……ここは病院って事か……でも何でこんなに暗いんだ……何も見えない……そうだ目を開けなくては……あれ? どうしたらいいんだ!
「師長、五号室の木村さんのCTって午後に変更になったんですよね」
「そうよ。三時半から」
「あっ、あの……前に相談にのってもらってた件なんですが……私、カレシと別れました」
「ちょっと桃井さん! そんな話、患者さんの前で……」
「聞こえてないですよ」
「そんな事言うもんじゃありません」
「はい……すみません……でも、そろそろ二ヶ月ですよね? 目覚める可能性は……」
二ヶ月? 二ヶ月も目覚めずに病院のベッドに? 何でだ……何でこんな事に? 一体何があったんだ? 思い出せない……。
「おはようございます」
誰か入って来た? 今度は誰だ? 女性の声だ……。
「お、お、おはようございます」
若い看護師、動揺してるな……。
「おはようございます……今日はちょっと早いんですね」
「そうなんですよ、師長さん。今から娘の学校へ寄ってから仕事へ行くので……気持ち早めに」
娘の……学校?
「ちょっとお疲れのようですね。少し、顔色が悪いみたいですけど……」
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