第2話 魔法少女教師 トキメキューティーチャー・ミサキ

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第2話 魔法少女教師 トキメキューティーチャー・ミサキ

「お、なんだなんだ?」  自然と身体が、宙に浮かぶ。  周りに見られているのではと思ったが、謎のファンシー空間で覆われて見えてないみたい。 「あれかな、マジックミラー号みたいな……ふ、服が!?」  やばい、マジックミラーの洗礼をうける……と思ったが違う。  着ていたスーツが光の粒子に溶けて、青く輝くワンピースに変わった。まだ変身完了ってわけじゃないみたい。  長時間の歩行でセットが乱れてボッサボサだった髪が、パリッとブルーに染まる。目にも星がキランと光った。  両手に、白い手袋が装着される。  青いワンピースも、傘のように広がったフリッフリのミニドレス・スカートに。中身はドロワーズだ。  最後に足元にニーハイ型ブーツを履いて変身完了……だよね!? 「魔法少女教師、トキメキューティーチャー・ミサキ!」  一応、様式美としてポーズをとる。ヘアピンを外し、魔法少女のバトンへと変形させた。 「あれ、なにこの空間? わたし巨大化してない!?」  さっきまで、普通の街並みだったはず。  しかし、わたしはやたら巨大化していて、ライブ会場みたいな場所にいる。  野外音楽堂のような場所に降り立っていた。  敵もなんだか、造形が怪獣めいている。エリがアンプのようになったエリマキトカゲだ。  先生で巨人って、お父さんが小学生の頃に見ていた特撮じゃん! 「巨大化して戦うのか。ドロワはいててよかったよぉ」 「違うわ。ここは相手の精神空間」  かすかに、アヤコの声がする。  よくみたら、更にでかくなったアヤコの手のひらの上にいる。  駅前のベンチで本を読んでいるフリをしているらしい。  その本の上で、わたしと魔物は戦っているのか。  さらにその周りは、人々の動きが停止している。 「なにこれ、時間停止モノ?」 「あんたはどうして、たとえがいちいちAVなの?」  アヤコに、呆れられた。 「違うわよ。私があんたたちをこの本の中に閉じ込めて、時間の感覚をズラしているの」  この空間に閉じ込められると、何倍も早く動けるらしい。 「で、この世界はなに?」 「あなたの敵が『こうありたい』と願った場所なの。あなたたちは巨大化したというより、私の力で『被害を最小限に抑えられるように圧縮』されているのよ」  なるほど。 「では、目一杯暴れてもOK?」 「OKよ!」  そうとわかれば。 「デュワ!」  モンスターになったギタリストに、水平チョップを食らわせる。 「プロレスなん!?」  ファイトスタイルを、アヤコに驚かれた。  そうだよ。大学で、女子プロレス部だったもん。 「もっと魔法のステッキとかバトンとかあるんだから、そっちで戦いなよ」 「使い方を知らん」  女児向けの魔法少女モノなんて、久しく見ていない。だから、どんな戦闘スタイルが主流なのか不明なんだよ。  大人向けみたいに、殴ればいいのか?  わたしは、バトンで相手を小突く。 「一応、ビーム出るけど?」 「やってみる。ジュワ!」  バトンを縦方向に立てて、反対の上腕で支える。  おっ、ハート型のビーム弾が確かに出た。  敵の顔面に、モロ直撃する。  効いているかどうかわからないが、倒れるまで何度も浴びせるまでだ。 「プワアア!」  エリマキトカゲが、背負っているギターを弾く。  至近距離にいたから、耳に音がダイレクトに響いた。 「おおっぷ!」  しかも、下手くそ! 吐きそう。 「俺の歌を聞けえギャギャ!」  歌までヘタッピで、聴いていられない。歌詞もかなりネガティブすぎて、気分が落ち込みそうだ。 「くそお、誰も俺の歌になんて耳を貸さない! 俺には才能がない! でも歌いたい!」  ジャカジャカと音を奏でながら、さらに怪物はネガティブな言葉を吐き飛ばす。  くっそウゼえ。 「おっさんになっても夢を追って悪いか? もう後には引けない歳になっても、なにかになりたいと願うのは罪か? それで家族が犠牲になって、逃げられて」 「んなもん、知るかってんだ!」  わたしは、音楽に負けないくらいに叫んだ。 「どっちかを犠牲にしてっから、しんどいんだろ! ガチで目標を立てるなら、どっちも大事にしてみろ! めんどくさがらずによお!」  あら、出ちゃったわぁ。  わたしの元ヤン口調が。
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