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「美結ー、忘れ物なーい?気をつけて行くのよー!」
「もう、うるさいな!ないから大丈夫!行ってきまーす」
ちょっとウザそうにあしらわれながらも、美結が走って行くのを玄関から見送る。
「まったく、人の気もしらないで」
保育園の頃はいつでも手を繋いでいたというのに、小学生になったら一気に親離れというか、成長期というか。
それでもまだ一年生。手はかかるし、心配はつきない。
やれやれ、とリビングに戻って目に入ったのは、テーブルに置かれたままのお弁当箱。
「う、嘘でしょ〜!」
慌ててエプロンを外して出かける準備をする。
今から追いかければ、間に合うかも!
学校までは、徒歩20分。
うちからすぐ裏の山の上。
田舎も田舎。何もないこの土地に、去年どデカい学園が創立された。
ここ最近話題の海外の名門校に負けず劣らず、広大な土地にこれでもかという最新設備。
セキュリティ対策も万全で、初等科から高等科まで。郊外の子に対しては寮完備。
当然、学費諸々バカ高いのだけれども、地域活性化として、地元民はなんとほぼ無料。
それゆえこの地に引っ越す!という家庭もあり、地元としても歓迎してはいる。が、増えすぎても困るというわけで、その審査は厳しいらしい。
うちはといえば、旦那の実家は農家で、昔からここに住んでいる。
結婚とともに同居となったので、美結はこの学園に地元優遇措置で、通っている。
それ自体はいいのだ。美結も楽しそうに通っているし。それ自体は。
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