忘れものにはご用心

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 お尻が突然の摩擦に悲鳴をあげる。  真っ暗な中、明らかに下に向かって滑ってる。ジェットコースター以上に怖い!  これ、滑り台⁉︎  気づいた時には下の方に光が見えた。 「あ、お、終わり?」  ほっとした瞬間、私の身体は滑り台らしきものから、ペッと吐き出された。 「うわゎああ」  一瞬の浮遊感の後、ドサッと地面に落ちる。 「あいたたた……」  なんとか着地に耐えたお尻をさすりながら、私はなにが起きたのかと、自分の脱出ルートを確認する。  見れば、学園の裏手に建てられた、展望台のような建物から、巨大な滑り台というか、非常時の脱出シューターのようなものが伸びている。  私が今、出てきたのは、これ? 「な、何でこれは原始的なのよ!」  思わず叫んだ瞬間、脱出シューターはシューッと吸い込まれるように展望台の方へ瞬時に畳まれていき、パタンと、壁に消えていった。  今となっては、何処が脱出口かわからない。 「……うそ」  広大な学園は、何事もなかったかのように静まり返っている。  残っているのは、ヒリヒリしたお尻の痛みと、疲労感だけ。  カーン、カーン、カーン  正午を知らせる鐘が鳴った。  その音が、私の疲労感をさらに重くさせる。 「と、とりあえず、帰ろ」  ヨロヨロと、足を何とか一歩だす。  忘れものを届けにきた。それだけだったはずなのに。 「……もう、絶対に忘れものなんてさせないんだから」  決意した私の耳に、小さく悲鳴が聞こえた。  ふと振り返ると、さっきの展望台から脱出シューターが伸びている。 「うわあぁぁぁぁ‼︎」  叫びとともに男性が放り出されて、尻もちついた。  同士の犠牲者、発見。 「……あ、お疲れ様です」  私の言葉をかき消すように、脱出シューターが展望台に収納された。
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