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ずっとずっと深い場所
深い深い地下の世界、そこで僕は奴隷として働いている。成り上がるたった一つの方法は地下の管理人に物語を提供すること。面白くて魅力的な物語はお金に変わる。それで過酷な労働から開放されたやつだってたくさんいる。けれど、呉じぃは、決してやつらに物語を渡してはいけないのだと僕に言う。それは魂が在るべき場所に帰れなくなるからだそうだ。
呉じぃの言う事はいつもよく分からない。金が手に入って辛い労働からオサラバ出来るなら、それに越したことは無いじゃないか。
僕が物語を思いつく才能を持っていたら、稼ぎまくって外の世界に行っただろう。けれど、その才能を持っていたのは僕じゃなく、幼なじみのクロウだった。彼は金が手に入ったら、一緒に外の世界に行こうと約束してくれた。
呉じぃは大反対だったが、構うもんか。大金を手に入れたクロウは、けれど僕を残して一人外の世界に行ってしまった。大切な仲間だと、家族のように思っていたのは僕だけだったのか?
ショックで何も手につかない状態だったけれど、生きるためには働かなければならない。僕は辛い気持ちを引きずりながら、馬車馬のように働いた。
そうしてある時外の世界から、フードを被った男たちがやって来た。彼らは奴隷を売りにやって来た商人らしかった。外の世界はどんな所なんだろう。
クロウがいる外の世界、彼らに聞けば何か分かるんだろうか。
もちろん奴隷である自分が話しかければ、それだけでどんな扱いを受けるか分からない。商人が管理人と対等に話せる立場なら、自分が話しかけるなんてもってのほかだ。けれど、僕は簡単に諦めるなんて出来なかった。
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