僕が染まっていく

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僕が染まっていく

「ワタル~、早く早く。もうお肉焼けちゃってるでしょ!」  僕は、マルコにせかされて急いで焼けたお肉をマルコのお皿に乗せた。    大盛マルコとは大学の授業で出会った。少しぽっちゃりとして色の白い中くらいの背丈の女の子だった。  顔立ちはいたって普通。目立たない程度の大きさの眼。少し低めの鼻。少し大きい口。髪は天パーだと言っている。放っておいても軽く肩のあたりでカールしている明るい茶色に染めた髪。  僕は細木ワタル。特に背も高くないし、どちらかと言えば痩せて貧相な体つき。顔もいたって普通。3歩歩いたら忘れられる程度にどこにでもいる顔だ。  なぜか、マルコは僕に好きだから付き合ってくれと告白してきた。  大学生にもなって彼女がいないのもどうかと思っていたし、明るくて毬みたいなマルコを少し可愛いとも思っていたので、付き合うことにした。  付き合ってまず驚いたのは、マルコがすごく食べる事。僕は痩せているくらいなので、元々食べ物にあまり執着はなかった。おなかがすいていなければ一食や二食抜いても平気だった。  マルコはきっちり3食食べる。それも結構な量を。  学食のメニューでは量が少ないと、必ず二人前は注文したし、外食しても定食だったらライス大盛りにするか、必ず汁物としてうどんやラーメンをつける。  気取った店は量が少ないから嫌いだと言うのは学生の僕には助かった。  それに、マルコは男子が全部払えばいいとは思っていない女子だった。自分の分は自分で払う。あまり食べない僕に遠慮してそう言っていたのかもしれない。今ではそう思う。  付き合って二年目に入ろうとする頃、マルコと僕のデートは必ずバイキングか食べ放題医の焼肉屋になった。 「私ばっかり食べていると恥ずかしいよ。」  というので、僕もそれなりにたべるようになった。  焼肉屋で肉を焼くのは僕の役目。僕は二人分焼きながらマルコの皿に肉を乗せていく。  バイキングは自分の好きなものを取ってきたいという事で、交代でとりに行く。  そして、恐ろしかったのは、だんだんマルコがぽっちゃりではなく、ぽってりになってきたこと。僕ももう、痩せて貧相ではなくなり、マルコと一緒に食べる事で頬にも肉が付き、お腹もベルトに乗ってきた。  学内では大型カップルと呼ばれるようになった。  僕はすっかりマルコに染まってしまったのだ。
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