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それから、僕は4年間帝都大学で勉強して主席で卒業。
2005年に警察学校に入学して見事公安部に配属されることになった。
でもそれは、また別のお話だ。
2002年2月。
僕はというと相変わらず花蓮のお世話になっていた。
「優くん、夜間学校とか考えてないの?」
「あぁ、一応考えてはいる。けれども、僕は他人と触れ合うのが苦手だ」
「いや、この半年でアンタは確実に人と触れ合うのが苦手じゃなくなっている筈だよ。そうだ、試しに昼の歌舞伎町を散歩してみようよ」
こうして、僕は花蓮と一緒に昼の歌舞伎町へと繰り出すことになった。
「昼の歌舞伎町って、こんなに安全なんだな」
「まあ、当然でしょう」
「ところで、君はどうして風俗嬢なんかになったんだ」
「女の子っていうのは色々と訳アリでね。今はアンタにする話じゃないな」
「そうか。僕は女心が分からない」
「大丈夫、そのうち分かるよ」
「ならいいんだ」
その時だった。
見覚えのある女性が、僕と花蓮の前に現れた。
それは、紛れもなく桧山仁美だった。
「あれ?仁美ちゃん?」
「あら。花蓮ちゃん、戸神くんとデート?」
「いや、デートというほどでもないかな」
「どう見てもデートな格好だけど?」
「仁美ちゃん、もしかしてアタシに嫉妬してる?」
「そんな訳ないじゃん。私と戸神くんは飽くまでも仕事での関係。恋愛感情は一切持っておりませんッ!」
「じゃあ、あの時の独白は何だったんだ・・・」
「爆弾設置されて囚われの身になったらああいうムードになるのは必然的でしょッ!」
「あー、確かにサスペンス映画あるあるだわ」
「でもね、私、あの時戸神君と一緒に仕事が出来て良かったと思っているんだ」
「そうだな。色々大変だったけど、あの潜入捜査は今となってはいい思い出だ」
「もしかしたら、またQ・・・じゃなかった。藤堂君からミッションが下されるかもしれないけど、その時はよろしくね」
「分かっているよ、仁美」
僕は、仁美にグッドサインを送った。
彼女に届いているかどうかは分からないけれども、遠くで彼女がウインクをしたような気はする。それは確かだ。
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