40人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ、もちろん」
「だから、アンタが半グレ集団のスパイをやるって聞いてからワクワクしてたんだ」
「いや、僕は好きでやっていた訳じゃないんだけどな。たまたま受信したメールから始まった仕事だ」
「でも、結果的に犯罪組織一つ壊滅させることに繋がっているから、世間の役に立ってんじゃん」
「確かにそれはそうだが、東京連合自体は公安によって存在が秘匿されていたんだぞ」
「そりゃそうだけど、もしもこの作戦が成功すれば、アンタは最年少で公安に入るってこともあり得るんだぞ」
「それはそうだな」
「とにかく、頑張ってね!」
僕は花蓮から額にキスをされた。
その感触に、僕の心臓の鼓動は早くなった。
これが、人を愛するということなんだと、僕は思った。
「赤星刑事、東京連合のクリスマスパーティーの詳細が分かりました」
「ご苦労だった」
「六本木のクラブで行われる大規模なクリスマスパーティーで、参加者はIT企業の社長から暴力団関係者まで100人近くだそうです」
「こりゃまた派手に集めたな」
「なにせ東京連合自体が関東最大の半グレ集団だからですからね。どこでコネクションがつながっているか分からないのが現状です」
「えーっと、パーティーの参加者リストを見ると・・・大手音楽レーベルであるビーレックスレコードの竹浦勝彦社長に最近急成長中のIT企業である楽々ネットの四谷浩介《よつやこうすけ》社長、人気グラビアアイドルの大池英子に東京ビクトリーズの人気選手である花園聖・・・。これって全部東京連合と繋がりがあるってことだな」
「そうなりますね」
「それはともかく、捜査一課総出でクリスマスイブに六本木のクラブに乗り込むぞッ!」
「はいッ!」
僕は僕で東京連合を壊滅させるのに必死だった。
あの少年のことが気になるからだ。
浮浪児であり探偵である戸神優希。その正体が知りたい。ただそれだけのことだった。
もしも可能ならば、あの少年を公安に欲しい。
彼がいれば、東京の治安は格段に良くなるだろう。
しかし、戸神優希は本当に東京連合を壊滅させられるのだろうか。僕は不安だった。
刻々と迫る運命の日。
僕は、考え事をしていた。
母親は元気にしているのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!