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アルコール依存症でありギャンブル依存症でもある母親を善く思ったことはない。
けれども、僕にとって唯一と言ってもいい家族だ。
どこかで生きていたらいいのに。
そう思いながら、僕は母親から託された御守を握りしめていた。
東京の夜空に、雪がちらつく。
今年の初雪は早いなと、僕は思った。
「ところで、今年の紅白になんでhitomiさん出なかったんですかね。僕、IS IT YOU?が結構好きだったんですけど」
「確かに。去年LOVE2000であれだけ知名度が上がったんだから今年も紅白に出るもんだと思っていたんだがな」
僕は、IS IT YOU?のカップリングに収録されているOPEN MINDという曲を聴きながら、せんべいをボリボリと食べていた。
ちなみに、hitomiというアーティストの存在は僕を拾った男から教えてもらった。そのスタイルの良さとパワフルな歌声、そして等身大の歌詞から、男女問わずファンが多いらしい。
もちろん、仕事をサボっているわけではない。
東京連合によるクリスマスパーティーの壊滅作戦を練っていたのだ。
「とりあえず煙幕は桧山君に投げてもらうとして、戸神君は目潰し魔の身柄を確保する。そして警視庁捜査一課が乗り込む。これで東京連合は一網打尽。僕の復讐は完了する」
「Qさん、結構大胆な作戦を考えるんですね」
「まあ、最後のミッションだからこれぐらいやらないと。一応警視庁の方にも連絡は入れてあるし、向こうでも作戦は練っているだろう」
「そうだな。後は戸神君と桧山さん、そして警視庁を信じるだけだ」
「よし」
――そして、僕は、相棒であり僕を拾った男である矢野輝とグータッチを交わした。
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